もしもダンガンロンパだったら



その巨大な学園は都会の一等地にそびえたっていた。

私立、希望ヶ丘学園。
学業、スポーツ、芸術、ゲーム、あらゆる分野の超一流を高校を集め育て上げる事を目的とした超特権的な学園。

この学校に入学するための条件は二つ。
一つは現役の高校生である事。
そして二つ目は各分野においてのエキスパートである事。

この学校を卒業したものは既に人生において成功したも同然と言われる程の超エリート学校だ。
専門の先生から専門の技術を学び彼らは人類の希望と言われ世に羽ばたいていく。

そんな超が何個もつくような学校を目の前に、私はポツンと立っていた。

琶月
「ここが・・・希望ヶ丘学園・・・。私みたいな普通な人間がこんな学校でやっていけるのかな・・・。」

本来ならば、私みたいな極々平凡な人間には全く縁のない所。
にもかかわらず私が今この凄い学校の前に立っている理由は手元に握りしめている紙のせいだ。
手元に握りしめている紙を広げ、そこに書いてある事と目の前の光景をいまだに信じられずにいた。

私が握りしめている紙には、紛れもなくこの希望ヶ丘学園に選ばれ入学の許可書が書かれている。
そう、私は選ばれてしまったらしい。この学園に!

ちなみに私が選ばれた理由は・・・超高校級の貧乳。
この学校の前に立っている理由はそんな下らない事だった。

琶月
「うう・・・こんな能力で他の人たちと一緒にやっていけるのかな・・・っていうかー!!誰ですかー!!こんな不名誉極まりない称号与えた人は~~!!私が文句言ってやりまーす!!」

新しい学園生活が始まる。希望と怒りと不安に満ちた一歩となる・・・・。


はずだった。


学園内に足を踏み入れた瞬間、突如視界が歪み目の前が真っ暗になった。

琶月
「なっ・・・・うっ・・・。」

何が起きているのか分らない。
そしてそれを理解するまもなく私は意識を失ってしまった。

これが始まり。
そして、終わり。

この時点で私は気づいても良かったかもしれない。
これがただ事じゃないという事に。


・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

次に目が覚めたら、私は教室の机の上に顔を突っ伏して寝ていた。

琶月
「あ・・・れ・・・。ここは?」

確かに、退屈な授業を受けている時は居眠りしてしまう事もあったけれど・・・。
だけど、何かが・・・変だ・・・・。

琶月
「頭・・・痛い・・・。」

何時間も昼寝をしまったかのような気怠さ。
私は今、何をしていんだっけ?
再び目を閉じて、やるべきことを思い返す。

そこで気づく。この教室の違和感に。

琶月
「・・・ん?」

窓があったと思われる場所には分厚い鉄板が打ち付けられている。
まるで、この教室に閉じ込めるかのような・・・。

それはちょっと考えすぎか。

琶月
「で、私は何をしようとしていたんだっけ・・えーと・・・。」

ふと、顔を見上げると時計が視界に入った。
時刻は今8時を示している。

琶月
「8時・・・8時・・・。ああああああ!!そうだ!希望ヶ丘学園の入学式!!こんな所で居眠りしている場合じゃなかった!!」

机の上に置いてあったパンフレットを急いで手に取る。だけど、私が持っていたパンフレットとは丸っきり違う物だった。

琶月
「あれ・・・?」

書いてある事は一緒だ。玄関ホールに八時に集合するようにと。
だけど、幼稚園児がクレヨンで落書きした文字のように、それは歪で汚く読むのに一苦労する程。
・・・そして何より目につくのは右下に書かれているデフォルメされたクマのような絵。これは何なのか?

琶月
「でも、今はこんなの考えている場合じゃないよね・・・。えーっと、集合場所は玄関ホール!!」

私はパンフレットを手に持って教室を飛び出した。
学校校内がどういう風に作られているのか、分らないけど多分出入り口っぽそうな所に行けば大丈夫・・・なはず。
そして、それは私が考えていた通り一際大きなドアを見つけ、その先には玄関ホールがあった。

琶月
「あったー!・・・・って・・・あれ・・・?」

玄関ホールにたどり着くと、そこには私以外に十数人の人が集まっていた。きっと私と同じくここ希望ヶ丘学園の新入生なのだろう。
だが、それ以上に目を惹いたのは外へと続くはずの通路には巨大な鉄板が聳え立っており出入り口が塞がれていた。
当たり前だがこれでは外へ出る事も中に入る事も出来ない。そしてこんなものは学校の前に立っていた時はなかった。
状況がよく呑み込めないまま私はオドオドしていると、声をかけてきた。

黒いコートを着た青年
「あんたも・・新入生なのか?」
琶月
「わっ!そ、そうです!!!」

黒い髪に黒いコートを着た青年。目も黒ければ履いている靴も黒い。何だこのまっくろな男は!
すると、真っ黒なコートを着た青年を横切るかのようにして別の誰かが私に話しかけてきた。

水色髪にヘアピンをつけた女性
「これで14人・・・ですね。どうも初めまして、ルイと申します。」
琶月
「あ、どうも・・・初めまして。琶月です。」

ルイ。私はこの人を知っている。
この超一流学校に入る生徒達の大体は某大手掲示板で調べれば名前と入学理由が書かれている。
この人の名前は『ルイ・アリス・トラクシー』。超高校級のメイド。
何でも、幼い頃から有名な貴族の元でメイドとして主人に尽し、12歳の頃にはメイド長を務めそして13歳には世界のとあるコンテストで最優秀賞に輝いたことがある経歴を持つ。
美貌もスタイルもいいし・・・私の能力に真っ向から刃向うあの豊満なバスト!!

ルイ
「どうかしましたか?」
琶月
「い、いえ!何でもありません!」

私が一歩後ずさりすると、ルイは私に微笑みを向け一度会釈してからその場から立ち去って行った。
この先ますますうまくやっていけるか不安になってしまった。

黒いコートを着た青年
「・・・・・・気負いするな。・・・俺もあんたも、きっと似たような境遇だ。」
琶月
「え?」

黒いコートを着た黒髪の青年は更に私に何か話しかけようとしていたが、それを遮るかのように誰かが大きな声をあげた。

筋肉ムキムキな赤髪の男
「くそっ、おい!そこのド貧乳!!」
琶月
「ひゃぃ!!」

突然怒鳴り声と共に指を差され私は竦み上がってしまった。

筋肉ムキムキな赤髪の男
「お前も目が覚めたとき、この学校のどこかで目覚めなかったか!?」
琶月
「え!あ!は、はい・・・そうですけど・・・。」
筋肉ムキムキな赤髪の男
「くそ、全員そうなのか・・・。」
癖毛の激しい黒髪の女性
「うーん、これは事件の香りがするね・・・。」
大きな弓を背負った男
「あ、あのさ・・・。ここにいる皆はこれからこの学校で一緒に時を過ごす仲間・・新入生なんですよね?自己紹介とか一応しておいたほうがいいんじゃないかな。」
目つきの鋭い白髪の男
「馬鹿馬鹿しい・・・。」
軍隊ヘルメットと勲章が目立つ男
「可愛い女の子の紹介を頼む。」
普通の軍服を着た男
「隊長!見た目とセリフが全くあってねーっす!!」
軍服姿のマシンガンを持った男
「俺のセリフが思いつかねー!」
目つきの鋭い白髪の男
「・・・うるさい、黙れ。」
癖毛の激しい黒髪の女性
「うーん、どっちでもいいけどさ・・・・。それよりあの巨大な鉄板・・・。」
ルイ
「私はみなさんの事は把握しておきたいですし・・・自己紹介しましょう♪」

巨大な弓を背負った男を口火に、私達は自己紹介することになった。
あの入り口をふさぐ巨大な鉄板の事も気になるけれど・・・今は皆の事を知る事が大事だ。

琶月
「(と、言っても私は皆の事を殆どネットで知っているんだけど・・・。)」

でも、挨拶をするに越したことはない。
まずは鉄板付近で屯している人達に話しかけてみよう。

琶月
「こ、こんにちは。」
大きな弓を背負った男
「こんにちは。・・・アハハ、そんなに緊張しなくてもいいよ。
僕の名前はテルミット。お互いに切磋琢磨しながら頑張っていこう。」

テルミット。この青い髪に程々の筋肉が好青年に見せかけてくれるこの人は周りから超高校級の射手と呼ばれている。
彼が斜めにして背負っているあの巨大な弓は全長1m70cmもあり、それを背負っている男の身長よりたったの8cm小さいだけのものだ。
ネットによるとあの弓の重さは5Kg。カーボンファイバーだとか何だとかですごく軽量化されているものらしいけど、それを片手で扱い
一度に5本もの矢を放ってそれぞれ異なる位置にある的を射るその実力は超高校級と呼ばれるのに相応しい腕前だ。
勿論、アーチェリーや弓騎による試合は全部優勝している。彼と私が競ったら、仮に彼が逆立ちしていたとしても私はきっと勝てないだろう・・・。

テルミット
「君は確か・・・超高校級のh」
琶月
「それ以上言わないでくださいね。」

ピシャと私は話を止めて早々に立ち去った。こんな能力誇りたくないっ!!!
何か呼び止める声が聞こえるけど、別の人と自己紹介することにする・・・・。

次に、あの・・・人間じゃない恐竜か何かみたいな見た目をした人・・・じゃない・・・恐竜?に話しかけてみるとしよう。

琶月
「えーと、こんにちはー?琶月です。」
ブラキオサウルスのような恐竜
「どうも、こんにちは。ファンです。」

ファン。このいかにもブラキオサウルスを小さくして可愛らしくした生き物はコンピューターのデーターベースですら煙を上げて壊れる程の知識を持っている。
そんな彼は周りからは超高校級の科学者と呼ばれている。
その膨大な知識量を元に、ありとあらゆる薬剤、兵器、そして人類が未だに見たことも作ったこともない物質を作り人類の偉大なる1ページに名を刻んでいる。
彼・・・と言っていいのか分らないが、その実力はもう学生コンクールで優勝だとかそういうレベルと比べてはいけない。既にノーベル賞を取得しており彼は生きる人間・・・かどうかわからないが国宝と言われている。
性格面でも、穏やかな性格の持ち主で怒っている所は誰一人見たことが居ないとか。

ファン
「琶月さんは化学は好きですか?」
琶月
「(嫌いって言うと怒られるかな・・・?)」

とりあえず好きと言っておこう。

琶月
「化学は好きな方ですよ。」
ファン
「それはとても良いことです。科学に興味を持つ方はとても少ないだけに、興味を持って頂けているのは大変嬉しいです。
科学に限らず何か日常生活で困った事があればいつでも仰ってください。」
琶月
「は・・・はい!ありがとうございます!」

やっとこの学園で安心して友達になれそうな人を見つけた気がする。
勿論、私みたいな人間がこんな人間(?)国宝とお友達になるのは恐れ多いのだけれども・・・・。

琶月
「日常生活で困ったことがあっても聞いてもいいんですか?」
ファン
「ええ、勿論です。例えば、性別転換してみたいとか。」

・・・・日常生活という範囲を大きく超えている。
また面倒な話になる前に私はそそくさと立ち去った。

次に目があったのは、あまりうれしくない事にさっきの筋肉ムキムキの赤髪の男。
思わず目を逸らしてしまったが向こうから話しかけられてしまった。

筋肉ムキムキの赤髪の男
「おいこら、貧乳。目逸らすな。」
琶月
「あーあーあー!!酷い酷い酷い!!人が気にしている事を!!」

彼の名前は勿論知っている。ネットで散々叩かれていたので・・・・。
彼の名前はヘル。超高校級の馬鹿力との異名を持ってこの学園に入学してきた。
その超ムキムキな風袋以上に彼は恐ろしい力を持っているらしく、重量挙げの世界選手権で見事に優勝を飾っている。
その時のダンベルの重さは何と600Kg・・!前の記録の2倍を上回る数値で記録を塗り替え、その化け物染みた力にお茶の間に恐怖の旋律が走った。
握力も相当な物らしく、小指と薬指でリンゴを挟んで粉々にできるらしい。・・・そこは普通力が入る場所ではないはずなのだが・・・。
そんな荒々しい男の通り、性格もかなり荒々しい。非常に口が悪く、行いも性格もダントツで悪い。
彼が世界選手権で優勝を飾ったとき、トロフィーをも粉々にした後、カメラに向かって中指を立てると言う最悪の挑発行為を取り世界中に喧嘩を売っている。
そんな男がこの学園に・・・。なるべくこの人には近寄りたくない・・・。

ヘル
「俺、お前の事知ってるんぞ。超高校級の貧乳だってな。だっせ!!一体どんな専門技術を学ぶつもりだ?バストと小さくする方法か?」
琶月
「うるさーーい!!私、この学園に入学した理由は学園長に文句を言いに来ただめですからーーーー!!」

だが私と彼では持っている経歴の規模が違い過ぎる。いくらヘルの口が悪くても、彼の前で私が何言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえない・・・。
私はヘルに文句を言いながらその場から立ち去った。

後ろ歩きで後退していたせいか誰かとぶつかってしまった。
私はすかさず振り返りその人に謝った。

琶月
「あ、ごめんなさい!」
白いふわふわ髪の子
「今のが初めてだから許してあげる。・・・ところで、だれ?」
琶月
「あ、私は琶月って言います。」
白いふわふわ髪の子
「ふーん・・・。あ、私はジェスターだよ!!皆のアイドルジェスター!」

ジェスター。ファンと同じくあまり人に見えないが、彼女もこの学園の新入生であることに間違いはない。
身長は大体120cm、真っ白い髪に真っ白いワンピースが特徴に思えるが、本当に特徴があるのはその髪の性質だ。
自由自在に動かすことのできるそのツインテールの髪はこの世のどの物よりふわふわしていて、何かの切っ掛けでジェスターを抱きしめたことのある人は
そのあまりの気持ちよさに卒倒したとか・・・。私にはちょっと理解できないけど、確かにぶつかったときなんか物凄くふわふわして気持ちよかったかも?
そんな彼女は周りから超高校級のアイドル・・・っと呼ばれているらしいのだけれど、これも某大手掲示板では疑惑の声が上がっていた。
何でも、自称超高校級のアイドルだとかで本当は別の異名を持っているだとかそんな書き込みが多く見られた。
確かに、私もジェスターが皆が羨むようなアイドルにはちょっと見えないけれど・・・・。それでも、一度は抱きしめてみたいっという人たちがジェスターに周りに(極一部の人が)群がりご機嫌を取ろうとしているらしい。
そんなジェスター、正確が非常に気まぐれで彼女を喜ばせるのは結構至難らしい。

琶月
「えーっとー・・・。」
ジェスター
「あれなんだろう。」
琶月
「あ!」

ジェスターに何か話しかけようとしたが、彼女は何か気になる物でも見つけたらしくそのままトテトテと走っていってしまった。
・・・私も別の誰かと話をしよう。

と、ちょうどその時。
後ろから誰かに話しかけられた。

???
「お主・・・。」
琶月
「はい?・・・あ、ああああああああーーーーーーーーーー!!!」
腰まで長く伸びた赤髪の女性
「なんじゃうるさい・・・。」
琶月
「し、師匠~~~~!!!」

私がこの腰まで長く伸びた赤髪の女性の胸元に飛びつこうとしたが、身を翻して避けてしまい私は顔から地面の上に落ちていった。
・・・私が今抱きつこうとしたこの人物の名前は輝月と言い超高校級の刀剣使いだ。
もう、凄い!凄いです師匠!!わああああああ!!師匠凄いーーーーーーーーー!!!!あんな筋肉馬鹿なんか真っ二つにしちゃってくださいぃぃ!!
・・・・もうちょっと真面目に説明します。
輝月は紅の道場と呼ばれる道場を親子三代に渡って運営している。輝月はその道場の当主として今、剣(正確には刀だが)の道を究めている。
小学生時代のころには既に剣道では世界大会で大の大人を打ち負かして優勝し、中学生時代には警察から要請を受け銃器を手に持ったマフィア達を相手に圧倒している凄い経歴を持っている。
彼女のその強さの秘訣は並ならぬ精神力と驚異的な集中力。インタビューを受けたときの輝月曰く、集中すれば弾丸すらナメクジが這っているかのように遅く見えるそうだ。
その刀の一振り一振りは正確かつ迅速で身に襲い掛かる弾丸は全て切り落とし、彼女が走り抜けた場所は死体しか残らない。
そして、ここが一番大事な所なのだが私琶月はこの輝月の一番弟子なのである!!!

輝月
「・・・まさか、お主までがこの学園に入学していたとは。正直驚きを隠しえぬ。」
琶月
「えへへ~。やっぱり愛がこの結果を引き寄せたに違いないんです。」
輝月
「嘘を抜かすでない。どうせ超高校級の貧乳とか下らぬ理由で選ばれたのではなかろうか?」
琶月
「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

両手で頭を抱えて泣きわめく。図星である上に改めてこんな能力でこの学園に入学したことが何とも恨めしい。
正直いって超貧乳である意外に他の人たちに誇れる要素なんて何一つ私にはない。いや、貧乳も誇れる内容ではないのだけれども・・・。

琶月
「うぅぅぅ~。師匠ぉ~・・・。」
輝月
「ええい、ベタベタくっつくでない!暑苦しい!!」

師匠に足蹴りにされ私は泣く泣く師匠の元から離れる。今は別の人と自己紹介をしよう・・・。
ここまで6人の人と自己紹介した。残りは7人だ。
私は目つきが鋭くオールバックの白髪の男に話しかけた。

琶月
「あのー・・こんにちは。私、琶月って言います。」
目つきの鋭い白髪の男
「・・・・ギーン。」

ギーン、超高校級の御曹司。
その二つ名からいかにこの人物が異様であるか良く分る。このギーンと呼ばれる男はある財閥の元で生れて育ち、帝国学について徹底的に学んだ超の言葉すら生ぬるいエリートだ。
生まれてこの方一度も負けを知ったことがなく、そして生まれてきた時点で既に勝ちが決まっている・・・・。これまで自己紹介してきた人達とは住む世界が違ったが
ギーンという人物に限ってはそれ以上に住む世界が違う。

目つきの鋭い白髪の男
「・・・・・・。」
琶月
「あのー・・・。」
目つきの鋭い白髪の男
「何だ?・・・目障りだから消えろ。」
琶月
「は、はいぃぃ!」

私はそそくさにその場から立ち去った。・・・あの人怖い。

目の堀が深い無精髭を生やした茶髪の男性
「ギーンに話しかけるとは勇気がある。」
琶月
「あ・・・。すいません。」
目の堀が深い無精髭を生やした茶髪の男性
「ディバンだ、よろしく。」
琶月
「琶月って言います。」

ギーンの元から去ったちょうど、私は目の堀が外国人のように深くそして金髪がくすんで茶色に見える無精髭と短髪の男性に声をかけられ固い握手を結んだ。
彼の名前はディバン。超高校級の考古学者だ。
顔の堀の深さから分る通り、彼はこの国の人間ではない。いわゆる外国人だ。だが流調に喋る所を見るとこの国での暮らしは慣れているらしい。
しかし、この学園に入学するためには現役の高校生である事が条件なのだがこのディバンという人物に限ってはとてもではないが高校生には見えない。
憶測だが、40歳前後に見える。そのぐらいに老けて見えるのか、はたまた本当に40歳前後なのか。
年齢と見た目の事についてはさておき、彼はその二つ名の通り世界の謎を解き明かす考古学者である。有史始まって以来、私達の歴史は記録され続けているが
それ以前の時代はどのような生活を送っていたのか分らない事が多い。そして失われた大陸などといった話になればそれは猶更だ。
そんな謎を解き明かすのが考古学者の仕事だ。ネットで調べた情報によると、あの伝説のアトランティス大陸を見つけたのはディバンの祖先らしく、そしてそのアトランティス大陸は浮上して
その浮上するために必要な幻の水晶玉をディバンは見つけ今解析中らしい・・・。物凄い事なのだろうけど私にはあまりその凄さが良く分らない。とりあえず凄いという事なのだろう。
・・・しかし年齢がとても気になる。

琶月
「・・・あのー・・・。失礼な事を聞いても良いでしょうか・・・?」
ディバン
「あぁ、年齢の事を聞きたいんだろう?」
琶月
「あ・・・その、すいません・・・。」
ディバン
「気にするな。俺は44歳だ。」
琶月
「よ、44歳!!?あの・・・それ本当に高校生・・・・あ、すいません・・・。」
ディバン
「俺はこう見えても中卒でな。一身上の都合で高校の卒業資格が必要になった。ちょうどここから声をかけられていてな。ここに入学したわけだ。」
琶月
「(うーん、凄い人なんだからわざわざ高校の卒業資格が必要になる状況って良く分らないんだけどなぁ・・・。)」

ディバンと少し雑談をした後に私は彼の元から離れ、そして別の人と自己紹介をしようとする。
ちょうど巨大な鉄板をマジマジと見つめ、何か考え続けている癖毛が激しく胸の大きい女性に私は話しかけた。

琶月
「あ、あの!」
癖毛の激しい黒髪の女性
「・・・ん?私の事?あ、自己紹介だね?私の名前はキュー!よろしく!!」(*注:大人キュー

キュー。超高校級の霊術師。
・・・彼女についてネットでいくらか調べたが中々詳しい素性は明らかにならなかった。
私が事前に調べて入手できた情報は、まず一つ目は癖がとても激しい事。寝癖だとかいうレベルじゃなく、しかもお風呂に入ってもこの癖毛は寝ないらしい。
まるで針金が入ってるかのようにそれはピョンと立つが彼女曰くそれが私の特徴だとか・・・。
そして二つ目は、霊術に関する扱いに長けている事。ここを一番私は知りたかったのだが残念ながらそれ以外に情報は出てこなかった。
この学園生活を共に過ごせば彼女について何か分る事は増えたりするだろうか?

琶月
「(それにしてもこの人・・・。胸大きい・・・・。それに背も高い・・・。
キュー
「にひひ、私は貴方の事知ってるよ。」
琶月
「え。」
キュー
「超高校級のド貧乳!!」
琶月
「超高校級の貧乳です!!ドはつきません!!!」
キュー
「いいじゃんー。私は貧乳っ子好きだよ?自分が貧乳じゃないからかもしれないけどね。超高校級の貧乳さんよろしく!」
琶月
「うぐぐぐ!!」

キューはそれだけ言うと私の元から離れてはまた再び巨大な鉄板を眺め始めた・・・何を考えているのか分らない人だ。

軍隊ヘルメットと勲章が目立つ男
「いやぁー、あのキューって人。胸大きくてそそるな・・・。」
普通の軍服を着た男
「隊長は乳デカ派っすか。俺は貧乳の方が好きだなぁ。」
軍服姿のマシンガンを持った男
「ガムナ!目の前のお前好みの超高校級の貧乳がっ!!!」
普通の軍服を着た男
「おお!貧乳だ!!滅茶苦茶ぺったんこだ!!」
琶月
「む、むかつくぅ・・・。」

私の目の前に現れたこの三馬鹿。軍隊ヘルメットと勲章が目立つこの男はヴィックス。
そして、普通の軍服を着た男はガムナと言い、マシンガンを持っているこの男はボロと言う。
この三人はこれまで出会った新入生と比べると少し一風変わった二つ名を持っている。

ヴィックス
「超高校級の貧乳!!我々の正体を教えてやろう!」
ボロ
「正体も何も見て分る能力っすけどね。」
ガムナ
「我々は!!愛を追い求め続ける超高校級のロマンティストだ!!・・・アイタッ!!」

言葉が出る前に私は手を出していた。
・・・この三人は超高校級の三馬鹿という異名を持っている。見ての通り、三人そろうと止めるのが難しい程テンションをあげ好き勝手に騒ぎ出す。いい迷惑だ。
ネット上では、意外な事に彼等に関する話題は少なかったが、いくつか面白いことがわかっている。
彼等は三人揃うと超高校級の三馬鹿と呼ばれているが、一人になると別の二つ名で呼ばれているらしい。
それは超高校級の軍人。彼等は確かに馬鹿らしいが、それと同時に世界の傭兵も恐れる超強力な軍人らしい。・・・見た目からではとても想像できないが・・・。
彼等に関する情報が意外と少ないのは、もしかしてどこかの軍に既に所属しておりかつ情報を規制しているからなのか?
そういう話もネットに飛び回っていたが真相は定かではない。

すると突然、胸元に何かの感触を感じた。・・・ボロの手が乗っかっている。

琶月
「・・・・・・。」
ボロ
「うーん、バストもアンダーバストも62。」
ヴィックス
「ド・ヒンニュー!!俺はいらねえええええええ!!!」
琶月
「こ、殺すーーーー!!!!!!!!!!」
ガムナ
「怒ったぞ!逃げろ!!!」

わあああ と言いながら三馬鹿は走り去っていった。

琶月
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。ゆ、ゆるるるさーん!!」

怒りを露わにしたのはいつ以来か。
・・・あの三人と友達になるのはやめよう。絶対に。

キュー、ギーン、ディバン、そして三馬鹿。この6人と自己紹介を終え、計12人の人と自己紹介を終えた。
最後に残ったのは、誰とも話さず壁に背を預け立ちすくんでいる人。
・・・最初に話しかけてくれた黒髪に黒いコートを着た男だ。

琶月
「(ちょっと気になる・・・。話しかけてみよう。)」

その男に近づいて挨拶をする。

琶月
「あの・・・さっき話しかけてくれましたよね?私、琶月って言います。」
黒いコートを着た青年
「・・・・キュピルって言う。」

キュピル。超高校級の???。
・・・この男については私は何も知らない。ネットでは私含めて14人の新入生がいるというのは知っていて、このキュピルっていう人以外は
全て某大手掲示板に情報が載っていた。

キュピル
「・・・・・・・・・・・。」
琶月
「あ、あのー・・・。」
キュピル
「・・・・・・・・どうした?」
琶月
「い、いえ。何でもないです。」

・・・凄く無口な人だ・・・。
最初に話しかけてくれたけど、あれは一体なんだったんだろう?
それに、彼の風貌はちょっと特異だ。周りのみんなは今自分が置かれている状況に理解出来ず落ち着きのない目をしているが
彼に限っては目の動きが落ち着いている。まるで、自分が何故この状況に置かれているのか理解しているかのように・・・・。

琶月
「(流石に考えすぎかな・・・。でもあの人変なの・・・。
黒色目立つし・・・何かボッチだし・・・。)」

私は大人しく引き下がった。

琶月
「(ふぅ、これで全員と自己紹介が出来たかな?)」

周りはまだ何人か自己紹介を続けている。楽しそうにお話している人達から早速喧嘩に近い揉め事を起こしている人まで。
・・・師匠とヘルが対立している。何か言われたのだろうか。
こうやって一歩身を引いて皆を見ると、いかに全員凄い人か改めて実感させられる。

琶月
「(それと比べて私何か・・・。)」

成績は下の上。運動神経は最悪。私の好きな映画や漫画について知りたければ各分野のランキングトップを見れば良い。
平均的・・・いや、平均以下の私がこの学園生活で果たして本当に生活していくことが出来るのか。

琶月
「(だけど・・・・。)」

今後の学生生活をしっかり送る事が出来るかどうか以前の問題に今私は直面しているのかもしれない。
入口をふさいでいる大きな鉄板。あの筋肉馬鹿がさっきから蹴り破ろうとしているが蹴った後に鳴り響く音からしてあの鉄板は下手したら
1mぐらいの厚さがあるのかもしれない・・・。ダイナマイトを投げつけたとしても壊れないかもしれない。

この玄関ホールにやってくる前に廊下を歩いてきたが、窓があったと思われる場所には全て50cmぐらいの分厚い鉄板が打ち付けられており
その鉄板を固定している巨大なネジはとてもではないが動かせそうにない。

そう、言い換えれば本当に・・・。

琶月
「(閉じ込められているみたい・・・・。でもちゃんとどこかに出入り口があったりするのかな・・・?)」
ヘル
「あぁ、くそ!俺がここ通った時こんなでけー鉄板なんかなかったぞ!」

蹴破るのを諦めたヘルが叫んだ。
・・・ヘルが言った通り、私もこの玄関ホールを通ったときはこんな巨大な鉄板なんか当然存在しなかった。途中で意識を失ったけどそれは確かに覚えている。

琶月
「(一体・・・どうなっているんだろう?)」

そんな事を考えていると、突如学校のアナウンスと思われる音が校内に鳴り響いた。


ピーンポーンパーンポーン。


色んな学校でよく聞くオードソックスな校内放送のアナウンス音。
全員口を止め玄関ホールは静寂に包まれた。そして誰もが天井を見上げ、その後に続く案内に耳を傾けた。
・・・しばらくして、奇妙な声が玄関ホールに響いた。

間の伸びた癪に障る声
「えーえー、校内放送。校内放送。これから入学式を始めるから、お前等は体育館に集まるように。集まるよーに!」

それだけを言うと、放送はプツンと切れ再び玄関ホールは静寂に包まれた。
そして再び誰かが疑問を問いかける声をあげると他のみんなも続いて一斉に今の放送の疑問を口に出し始めた。

ジェスター
「何?今の不快な声・・・。」
テルミット
「不気味以外の・・・何物でもなかった。」

全員が感じ取ったことは同じみたいだ。

不気味。
不安と怖れを抱いているようだ。
ただ、そんな中真っ先に歩を進めた者が一人いた。

ギーン
「下らない・・・。」

ただそれだけを呟くと体育館へ向かって歩き始めた。
他のみんなはギーンの後に続くかどうかまだ迷っているようだ。

ルイ
「あの・・・・。体育館に皆さんは行かれるのですか?」
輝月
「別に恐れる事はなかろう。物の怪でも現れようものならワシが切り捨ててみせん。」
琶月
「流石師匠ぉぉ~!!かっこいぃぃ~~!!!」
輝月
「ええい、くっつくな!!ド貧乳!!」
ヘル
「おめーも十分ド貧乳だろ・・・。」
琶月
「何言っているんですかっ!!師匠は私よりも1cmバストが大きいんですよ!!!」
キュー
「何か・・・小数点に小数点かけた感じだね・・・・。」
キュピル
「・・・先に言っているぞ。」

ギーンに続いてキュピルが先に進む。それに続いてまた一人、そしてまた一人を体育館へ向かって歩き出す。
そして五人以上体育館へ向かい始めると残った人達もそれに続くように集団で体育館へ移動を開始した。


琶月
「(・・・心配する事・・・ないよね?ただの入学式・・・だよね・・・?)」

自分にそう言い聞かしたけれど、胸の内に残る不安感を拭い去る事は出来なかった。




この時、まだ私は知る由もなかった・・・。

この学園内で起こるこれからの壮絶な殺し合いに巻き込まれることになるなんて・・・。


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